夢みるたまご 10
落ち葉がカサカサと鳴る季節、少し肌寒いけど風が心地いい。
庭を駆け回り落ち葉を飛ばして遊んでいる小さい子達はチマとチキ。
訳あって親のいないポケモンの卵にぼくとパートナーのキバナさん、それぞれの遺伝子が融合して生まれたドラゴンポケモンと人間のハーフ。
ポケモンの研究機関に許可を貰ってぼくらの家で育てている。
生まれは別々だったけど、ずっと兄弟のように育ってきた。
二匹のうちぼくに似ている方が、ドラパルトのハーフで名前はチマ、キバナさんに似ている方がオンバーンのハーフでチキ。
“ち”いさい“マ”クワのチマと、“ち”いさい“キ”バナのチキ。
どちらもキバナさんによるネーミングだ。
今日もチマとチキの日々の出来事を綴っていきます。
10月16日
テーブルの上に置いてあるりんごをチマとチキが眺めている。
そんな時、インターホンが鳴ったので、食べていいよとだけ伝えて玄関に行ったぼくが宅配を受け取って戻るとチキはムシャムシャとりんごを頬張っていて、チマはりんごを覆っていたフルーツキャップを頭に被って得意げにしていた。
「これはりんごのかみさまのものまねです」と言うので話を聞いてみると、かみさまは自然界などに沢山存在するらしい。
チマとチキはこういう話をよくする......ドラゴンやゴーストタイプにはよくある事なのだろうか?
まあ、りんごの神様が本当にそんな姿なのかも謎だけど。
しばらくして気が済んだらしく、フルーツキャップをそっとおろしてりんごを食べていた。
10月17日
キバナさんが寝ているチマとチキを見つめて
「生まれた時は喋らなかったし卵から出てきたから気にしてなかったけど、今は二匹って言うよりもう「二人」だよな」と呟いた。
そんなキバナさんを見つめて頷くと、彼はニコッと笑った。
10月18日
二人が部屋の隅でオセロの駒を床に一列に並べている。
何してるの?と聞くと「なぞのぽけもんのとおりみちです」とチマ。
通り道?と聞くと
「あのね、よなかにこっそりやってきて......」
「みんなにひみつで......」
「ちーずをたべちゃうの」
「たべるの」
「たくさんたべちゃうの」
ヒソヒソとチキが言うとチマも続けて小声で言う。
どうやら夜中にこっそり家に侵入して冷蔵庫からチーズをたくさん盗み食いする謎のポケモンとやらを、台所に行かせずにお外にUターンさせる為の道らしい。
二人は道を作った後も点検作業のような事をしていた。
10月19日
二人が「すうじのひみつ」という易しい算数を教える教育番組を熱心に見ている。
博士風のパペットが足し算の解説をしているので分かるかな?と聞いてみたら「わかる!ちいさいおにいちゃんがくつしたにおかねをかくしもちあるいてるのをみたことあります!キュン!」とチマが言うと、隣で聞いていたチキが「ちきんはおかいあげです」とドヤ顔で言った。
どこから発生した何の話なのかさっぱり分からない。
めげずに簡単な足し算を教えてみたら少し身についたようだけど、小さいお兄ちゃんとチキンが何なのかは謎のままだ。
10月20日
二人に新しい画用紙とクレヨンをプレゼントして「何でも好きなものを描いていいですよ」と伝えると、チマが早速画用紙にクレヨンで何かを描いた。
何を描いたんだろうと覗いてみると、お天気の中を散歩するツボツボだった。
上手だねと褒めると、チマは鼻の下を擦って照れていた。
チキの方を見ると画用紙の中心に小さくぽつんとぐるぐるした丸いものが描かれている。
ロールケーキですか?って聞いてみたら輪切りにしたネギだそうだ。
ぼくが返答に困っていると画用紙に輪切りのネギがどんどん増えていき、チマも手伝い始め画用紙いっぱいにネギが描かれると、チキが満足そうに「ねぎねぎ」と呟いた。
10月21日
チマとチキがミニチュアのテーブルにお皿やカップを並べてアフタヌーンティーごっこをしている。
チマがとぽとぽ〜と言いながらカップにお茶を注ぐ真似をしていると、チキがポツリと呟いた。
「そのてぃーぽっとはあと3びょうたつと、たきになります」
チマが一瞬ピタッと止まった後ポットを高く掲げた。
「どぉ〜!どどど〜!ぼちゃぼちゃぼちゃ!」
「うわ〜!たきだぁー!!」
「ひゃー!!」
ポットから激しくお茶が吹き出している芝居をしているチマを置いてチキが離れたと思ったら、おもちゃのビニールボートを持ってきてボートに入り、チマに手を差し伸べる。
チマは椅子にポットを置くとボートに入った。
「ここはこうちゃのうみです」
「まぁろまんちっく」
「もうにどとおうちにはかえれない......」
「ええーっ!?」
あまりの急展開に、カフェオレを啜りながらぼんやりと二人を眺めていたキバナさんが咽せた。
するとチキがぼく達の方へ「もし......たびのおかた、すぽんじをください」と呼びかけてくるので、
収納からストックしてあるスポンジをひとつ出してあげると、チキはなにやら呪文のようなものを唱えてから、紅茶の海らしきところに恭しくスポンジを下ろした。
そしてしばらくチキが「しゅごごご」と言いながらスポンジを押し揉んで、チマが声援を送る時間が続く。
「こうちゃはすべてすぽんじがすいました」
「よかった」
「おかえりは とほ です」
「とほほ」
二人は無事に生還できたようで、何事も無かったようにアフタヌーンティーごっこを再開した。
10月22日
チマとチキがチーズオムライス号こと、自分達のベッドでまた航海ごっこをしている。
チキが以前書いた地図と、何故か最近描いたネギの絵を並べているので何かと思っていたら、今回の航海はネギの島を探す旅らしい。
なんでそんなにネギがブームなのだろう......
しばらくして島を見つけたらしく二人は大興奮。
「みつけた!ねぎのおしま!」
「おふねをださなきゃクルルル」
チマが紐の先端に磁石を縛ってあるものをゆっくり床に下ろした。
碇の代わりかな?
「おねぎはこのしまのなかのどれかです」
「みつけなきゃ」
二人は地図を持って部屋の中をウロウロしだした。
10月23日
今日はマクロコスモスの研究所でチマとチキの定期健康診断だ。
検査を終えたチマがぼくの側に寄ってきて抱っこをねだった、今日は甘えたい日らしい。
「まくわ、おひざすわっていい?」
チキの問診をしていた研究員さんが微笑ましそうにこちらを見ていたので少し照れ臭くなりながら頷くと、チマは研究員さんにぺこりと頭を下げてぼくの膝の上に座り、満足そうな顔をした。
まだ診察中のチキがこちらを見て、チマを笑わせようとタコ踊りみたいな動きをして研究員さんに止められていた。
10月24日
試合を終えてスマホロトムを見ると、家にいたキバナさんから「今日は寒いからシチューだぞ」と動画付きのメッセージが届いていた。
チマとチキが即興で作ったらしいシチューの歌を歌っている。
家に帰ってから食卓につくと、チマが「しちゅにはみるくのぱわーがみなぎっているの」と言い出した。
どんなパワーなんだ?とキバナさんが聞くと「あのね、からだがひかる」と返す。
......なんでこの子はずっと乳製品で体が光ると思っているんだろう。
10月25日
今日はチマとチキが好きなバラエティ番組がやっている日だ。
二人はテレビの前に座って番組が始まるのを待っている。
キバナさんが二人の隣に座って一緒に見始めたけど、途中で寝てしまった。
そんなキバナさんに毛布を掛けていると、二人がお互いに「しー」とジェスチャーし合っていた、かわいい。
10月26日
今日は二人のキルクスジムデビューの日だ。
と言っても関係者専用の場所限定だけど。
多少のお留守番は出来るけど、基本的に今まで日中は研究所に預けていたのが、事前に周知するならそれぞれのジムの関係者には存在を知らせていいと許可を得られたのだ。
チマとチキはジムのトレーナーやマネージャー達に挨拶した後、滞在中少し緊張した様子だった。
帰宅後、いい子に出来て偉かったねとキバナさんと二人で褒めると、嬉しそうにしていた。
10月27日
チマとチキがスヤスヤとお昼寝している。
しばらくして目を覚ました二人がもちもち?もちもち......と囁いていた。
「もちもちって何ですか?」
興味本位で聞いてみると二人はぼくの肩に飛んできて、ヒソヒソと耳打ちする。
「いろんなばしょからもちもちのみどりがこんにちはするの」
「どこにでもいる」
「そういう夢だったんですか?」
「そうだよ〜」
「うえきばちからでてくるみどりのもちもち」
「うみからとびだすもちもち」
「でもさくさくしてるの」
「ちーずたべる」
「いろいろなかたち」
「たまにあかい」
「ちょっぴり」
「......随分不思議な夢を見たようですね」
「このきもちをおうたにします」
「おうたにいたします」
「そうですか」
「もちもちのうた〜♪」
「もちもちおもち〜♪」
「おもちといっしょに〜♪」
「ぴくるすたべる〜♪」
「しゅっぱい!」
......毎度の事ながらさっぱり意味は分からないけど、とりあえず今度グミでも買ってあげる事にした。
10月28日
今日は風が強い。
窓越しに聞こえる風鳴りの音を二人がピューピューと真似している。
「かぜのね」「かぜのことば」と二人なりに名前を付けていた。
なかなか詩的だなとキバナさんが呟くと二人が「してき」の意味を教えてとキバナさんに詰め寄っていて、キバナさんはあたふたしていた。
説明しようとしばらく頑張っていたけど、途中から何故かスマホロトムで検索した詩の読み聞かせが始まっていた。
10月29日
雨でなんとなく気怠い空気だからか今日はチマとチキがおとなしい。
ドームベッドの中でモフモフとぬいぐるみやクッションを揉んだりしている。
チキが「おひるねする?」と聞くと、チマは「しな〜い」と首を振った。
「でもさむいからいっしょにおふとんはいりたい、ギャウ」
「……じゃあちょっとだけならいいよ」
二人はドームベッドにブランケットをずるずると引き入れて、そこに一緒に潜ってなにかひそひそ話をしている。
そして数分も経たない内にスピー、プスーと寝息が聞こえてきた。
10月30日
おやつと一緒にホットミルクを出すと、二人がミルクに張った膜に息をフーフー吹き掛けて、ミルク占いという占いをしていた。
膜の皺のより方で運勢が分かるらしい。
色んな事を考えるなぁ。
ひとしきり取り組んだ後、膜を食べて、少しぬるくなったミルクにドーナツを浸して食べるチマとチキ。
「どんな運勢だったのですか?」
おやつを食べ終えたところで聞いてみた。
「えっとね、らっきーあいてむはまかろにです」
「あいてむがでたらほかくします」
「にげるまかろにをつかまえたららっきーです」
「......」
台所からマカロニを一つ出して持って来ると二人が口々にまかろにだ!と言うのでテーブルに置いてみると、
そのマカロニを拾って掲げ、逃げるマカロニ役をするチキをチマが追いかけていった。
10月31日 今日はハロウィン。
仮装した二人が、キバナさんに「とりっくおあとりーと!」と言ってお菓子を貰っていた。
かぼちゃの形をしたカゴに詰め込まれたお菓子に目をキラキラさせた二人が
「いたずらしません!」とキバナさんに伝えると、キバナさんは笑いながら頭をポンポンしていた。
魔法使いの格好をしたチマが小さな魔法の杖をふりふりしながら呪文を唱える。
「ちちんぷいぷい〜キュルーン」
するとピーターパンの格好をしたチキも自分と同じ大きさくらいのツイストマシュマロをふりふりしながら
「かしこみかしこみ〜」と唱えた。
......チキのはちょっと違う気がする。
すぐ食べるお菓子は一つずつだけにさせておいて、オーブンで焼いていたパンプキンパイをテーブルに並べると、二人はキャッキャと喜んでいた。
11月1日
二人がドールハウスのキッチンに立ってお料理ごっこをしている。
今日はリゾットを作るそうだ。
「それではかくしあじを10こ、なにいれるかかんがえてください、キュルン」
隠し味多いなぁ......
「ひとつめはおいしいにんじん」
「ふたつめはにんじんといっしょにいれたらあまいとひょうばんのかわいいたまごさん」
「みっつめはとろとろのちょこれーと!」
「よっつめのかくしあじはうんどうかいのたいかいでかったきんのトロフィーです」
「いつつめはなまでやいたにんじんです」
「むっつめは……えっと、おまめ」
「ななつめは......がらむまさら」
急にちゃんとした調味料名が出てきた。
「やっつめは……はなびら」
「ここのつめのかくしあじはおいしいりんごです」
「たくさんたべたい!ギャウ!」
「さいご、とくせんにんじんのあじがするきゃろとすてぃくもいれちゃいます」
「これでかんせい!」
チマがそう言ってどこからか取り出したプラスチックのにんじんを鍋に入れる。
「できました!にんじんのかたまり!」
「あれ?りぞとは?」
「わすれました」
「キューン......」
「そんなひもある」
二人は、ミニチュアの寸胴鍋に突き刺さったおもちゃのにんじんをしばらくじっと眺めていた......
11月2日
今日は朝から大雨で、チマとチキが雨を見たいというので二人用のソファーを窓の方に向けてあげた。
ソファーにくっついて座って雨を眺める二人。
「あめすご〜い」
「ざあざあ」
「ねえねえ」
「なあに?ちま」
「あめがとつぜんそらにぎゅーんって、ひきかえして、みずがぶわっとなったらどうなるの?」
「んっとねえ......かわく」
「かわくだけ?」
「あと……おひるねがきもちい?」
「そっかぁ」
「ちまは?」
「あめ、ふったらいいとおもう」
「どのくらい?」
「ちょっと」
「ふーん」
チマとチキの会話を聞きながら、ぼくは雨音に耳を傾けていた。
11月3日
昨日からの雨はお昼前に上がり、今は青空が広がっている。
雨の名残なのか瑞々しい空気だ。
二人が楽しそうに庭の草の上で踊るように歩いていると、どこかのお宅から入ってきたウールーがその後ろをトコトコついてきていた。
「あらあら」
チキが立ち止まってウールーに向き合う。
そしてウールーのお腹をもふもふと撫で始めた。
「ふわふわです」
「もこもこー!」
チマも一緒になって触り始めると、ウールーは身を屈めて頭を二人に寄せる。
チマがそろりとウールの耳を触って、ウールーは気持ちよさそうに目を細めた。
「もこもこー!」
チキがそう言って嬉しそうにウールーの毛に顔をうずめている。
「おひさまのにおいです」とチマが言うとチキも真似して「おひさまのにおい」と呟いた。
遠くから誰かの声が聞こえて、ウールーがメェと一鳴きしてトコトコと庭を出ていく。
「ばいばーい」
「またきてねー」
チマとチキはしばらくウールーの後ろ姿に手を振っていた。
11月4日
今日はキバナさんと二人で、ナックルシティにある老舗のレストランへ行く。
二人きりで過ごすのは久しぶりだ。
キバナさんはここの料理が好きでよく来ているらしい。
今日は暖かいけれど、テラスから見る景色はぼんやりとした曇り空だ。
「ここ、最初に来たのはオレがまだジムチャレンジしてたくらいの頃でさ」
「そうなんですか」
「まあ、それ以降はほとんど仕事関係か昼休みの食事だけど……たまーにそういうの抜きでダチやスタッフ達とのんびり駄弁って……懐かしいな」
キバナさんはそう言うと少し遠くを見るような目付きになった。
二人で舌鼓を打っていると、ふと思い出したようにキバナさんが呟いた。
「チキの卵をワイルドエリアの巡回で見つけた日も、朝ここに寄ったなぁ。朝は店頭でサンドウィッチ売ってる時があるんだよ」
「へえ」
「テイクアウトも出来るから土産に買っていくか」
チマとチキを迎えに行って、帰ったら二人にサンドウィッチを出そう、などと話しているうちに空が少しずつ晴れてきていた。
11月5日
今日は雲一つない晴天だ。
そんな空を見てキバナさんがピーカンと言った事でチマとチキに質問責めにされている。
「ええとつまりだな、ピーカンのピーはー……」
「ぴかちゅ!」
「ピカチュウじゃないなぁ」
「ぴちゅー」
「ポケモンじゃなくてだな」
「じゃあ、やたぴのみのぴ!」
「ピが1番後ろにいっちゃったぜ?」
「あれー?」
「ピは1番前なの」
「ぴっぴかちゅ」
「ピカチュウじゃないなぁ」
「ぴ〜」
「ぴぃ〜」
とうとう二人が諦め始めたのでキバナさんがちゃんとした説明を始めた。
「ピーカンは、お日様が出ている天気のことで......」
「じゃあ、ぴーでかんかんなのね」
「そうそう」
「そうそう!?」
「......実はオレも語源を知らない」
ぼくとキバナさんが顔を見合わせていると、チマとチキがもう一度ぽつりと「ぴかちゅ」と言った。
11月6日
チマとチキが最近教育番組でやっているダンスの振り付けを真似している。
「ちまはね、おててひろげるの」
「ちきはおみみぴーんってする!」
「ちまもぴーんする!」
二人は手をピコピコ動かして、うさぎポケモンの耳の動きを真似している。
「ちまはね、ぴょんってするの」
「ちきもぴょーん!」
二人は手をピョコピョコ動かして、うさぎポケモンのジャンプの動きを真似している。
「おぼえたかな?」
「おぼえた!」
「じゃあつぎはこんぶのうごき」
「こんぶ!?」
「みねらるがいっぱいだから」
「じゃあしょうがないね」
二人は何故かゆらゆらと昆布が揺れる動きの真似を始めた......
11月7日
二人が自分達のベッドの上で布団をぐるりと丸く囲いみたいにしている。
「ここはひみつのいりえ」
「ひみつきち」
「ここにおたからをかくそう......よいしょ」
チマが虹色のビー玉を小さな箱に入れて、それに「おたから」と書いた紙を貼る。
「よーし......かくすぞ〜」
「あそこのすきまにおたからもってかくれちゃお」
そして二人は布団に潜り込んで、くすくすと笑いながらしばらくもぞもぞしていた。
11月8日
今日は快晴だし、久しぶりの休日だし……という事でチマとチキを連れてワイルドエリアにピクニックに行く事にした。
「おべんとう」「おべんとう!」
二人は嬉しそうにしている。
「おにもつていさつする!ギャウ!」
「ちまもてーしゃつする!」
チマがまずピクニック用のバスケットに頭を突っ込んでごそごそ入っていったと思えば、ぴょこりと顔を出してニコニコしている。
「ちまのてーしゃつ」
「チキも!」
チキもバスケットに入り込んで、同じように頭を出して満足気に笑った。
「なにもな〜い」
「からっぽ〜」
「ていしゃつおわり」
二人がバスケットから出てきて自分達の小さなリュックにお気に入りのおもちゃを入れて支度をし始める。
空っぽのバスケットにお弁当ときのみを詰めて、ぼく達はワイルドエリアへ出発した。
今日は趣向を変えてピクニックを始める前に地下洞窟を少し散策する。
ところどころに設置されているロープ柵に沿って歩いていると、行き止まりにはキラキラした鉱石の埋まっている大空洞があった。
「こりゃすごい」
キバナさんと一緒に大空洞の中を見回してみる。
「こんな場所もあったんですね」
「ここはまだ地質調査団くらいしか来ない場所らしいから、こういう鉱物が自然のまま残ってるんだな」
「なるほど……チマとチキもおいで」
二人を手招くと二人共ニコニコしながら走ってきたので、キバナさんが笑いながらひょいと抱き上げる。
チマとチキは天井に広がる星空のような鉱物をしばらく眺めてから、それぞれ背負っていたリュックから小さな水晶を取り出した。
以前庭から出てきたものだ。
「以外なモノを持ってきたなぁ」
キバナさんが思いがけない出来事を面白がっていると、チマとチキは水晶を手に見つめ合った後、徐に水晶を両手で持ったまま高く掲げてフリフリと振り始めた。
不思議な行動をしばらく見守っていると、二人はそっとリュックに水晶を戻しニッコリと笑った。
洞窟を出て近くの花畑の側でシートを広げてお弁当タイムにする。
「さっきのは何だったんだ?」
唐揚げを頬張っているチマとチキにキバナさんが聞いてみると、二人は口々に「おはなしした」「なかよしした」と答えた。
「仲良し?」キバナさんが聞くと、二人はパタパタと尻尾を振っていた。
今回はこの辺で。
今二人は自分達の部屋のベッドの布団に潜り込んで、あっちに行ったりこっちに行ったりとモゾモゾしています。
外から見ると小さな膨らみがポコポコと動いている。
部屋の散策をしていたコータスがそれを見つけて布団の中に顔を突っ込むと、膨らみがコータスに近づいてキャッキャと笑い声が布団の中から聞こえた。
布団を捲って「おやつだよ」と言うと「さむーい!」「でもおやつ!」と、二人がぼくと布団を交互に見て、少し考えた後「おやつ!」とベッドから飛び出し、コータスと一緒にリビングへ歩いていった。
仲良しでいいね。
それでは、また今度お会いしましょう。