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夢見るたまご 5

窓際に近い日陰に置いてあげたクッションで、小さな生き物二匹が仲良く寄り添ってうとうとしている。
あの子達はチマとチキ。
訳あって親のいないポケモンの卵に、僕と恋人のキバナさんそれぞれの遺伝子が融合して生まれたドラゴンポケモンと人間のハーフ。
ポケモンの研究機関に許可を貰ってうちで育てている。
ぼくに似ている方が、ドラパルトのハーフで名前はチマ。
キバナさんに似ている方がオンバーンのハーフでチキ。
“ち”いさい“マ”クワのチマと、“ち”いさい“キ”バナのチキ。
どちらもキバナさんが名付けている。

今日はそんな二匹の成長の記録を少し紹介してみたいと思います。
まあ、ほとんど日記みたいなものなのだけど。

4/20
チマが単語を真似するようになり最近は牛乳をにゅーにゅーと呼んでいる、かわいい。
小さな器に注いであげるとチキと仲良く飲みながら、チキに教えるように「にゅーにゅー」と繰り返している。
しばらくするとチキも「にゅ」と言うようになった。

4/21
チマが空のモンスターボールのボタンを押したらしく中に入ってしまった。
元はポケモンなのだから不思議では無いのだけど、
やっぱり人間のハーフなので念の為キバナさんと一緒にチマとチキがモンスターボールに入っても問題が無いのかどうか、
マクロコスモス研究所に相談にいくと検査をしてくれた。
結果は、二匹とも普通のポケモン同様ボールに入る事が出来るそうだ。
帰り道にキバナさんが「ボールに入れるなら行ける場所が増えるよな」と言う。
確かに、人間のハーフである二匹は一般人の目に触れないよう基本的にはマクロコスモス管轄の施設くらいでしか
遊ばせてあげられなかったけど、道中姿を目立たなく出来るなら行楽の選択肢も増えるのかも。

4/22
少しだけ衣替えをする。
棚に置いておいた手袋に二匹が足を入れて遊んでいる。
お人形みたいな手乗りサイズの二匹が入るとまるで手袋が寝袋みたいだ。
楽しそうなので手袋をしまうのは後日にしよう。今日の夕飯は照り焼きチキンカレーにした。
ツヤツヤの甘いタレがカレーと良く合う照り焼きチキンカレー、
この前買ったレシピ本を参考に作ったら美味しかったのでまた作ろうと思う。

4/23
朝起きるとチマが籠ベッドの布団の中でちるちる寝言を言っている。
すると隣で同じくまだ寝ているチキが、チマの寝言に寝言で返事していた。
キバナさんが横で寝言のやりとりに混ざろうと、小声で二匹にちるちると囁き掛けている様子が面白くて笑ってしまった。
昼ご飯に生姜焼きを作ったら二匹揃って喜んで食べていた。

4/24
最近キバナさんがまた二匹に色々言葉を教えようとしている。
今日は「やさい」「おみせやさんごっこ」などの遊び道具を使って二匹に言葉を教える練習をしていた。
僕はその様子を横で見ていたけれど、二匹には難しすぎるようで首を傾げられていた。
夕方から雨になったのでお勉強の場所が窓際に移り「あめ」「くも」「かぜ」など天候に関する言葉を教わっていたようだ。
ぼくも一緒に聞いていて、キバナさんが「あめ」と言った時チマが「めっめ!」と言い出したのが可愛くて
思わず吹き出してしまった。
段々と発音が変わり、チマとチキが雨のことを「ぬめ!」と言うと、
キバナさんのヌメルゴンがそれに反応して楽しそうに「ぬめ〜」と言った。

4/25
チマがクッションの上でぽよぽよ跳ねてキャッキャとはしゃいでいる。
その様子を見ていてチキが自分もやってみたいと言わんばかりに飛び乗ってぽよんとしていた。
しばらくするとチキがチマに手を引かれ、二匹は両手を繋いでクッションをトランポリンのようにして飛び跳ね始めた。
その姿を見たキバナさんが「オマエ達本当に仲良しだな」と言っていた。
ぼくは「いいことですね」と答えた。
チマが楽しそうなのはもちろんだけど、チキはやや大人びているというか普段あまり表情を見せない子だから、
こんな風に笑うのを見るのはちょっと嬉しい。
跳ね疲れた後はそのままクッションの上で寛いでいた。
チマは寝転がりながらクッションをコネコネ揉んでいた

4/26
昨夜見たテレビ番組の影響なのか、今日はチキが「おえんと」と言って身振りでおにぎりを握る真似をしていた。
さらにお弁当箱に詰める真似をして遊んでいる、かわいい。
そのジェスチャー遊びを眺めていると、途中からチキが新しいお弁当箱を渡す動きを追加して、
お弁当を詰めるチマと容器を補充するチキというジェスチャーの分担が始まった。
流れ作業みたいに続くそれはお弁当が100個ほど出来上がる頃まで続いた。
チマもノリノリでお弁当の仕度をしているように見えた。
しかし途中で飽きたのか、今度は「ごは」と言うようになった。
そして「おにぎり食べたい」と言わんばかりに二匹がぼくに向かっておにぎりを握るジェスチャーを見せてくる。
二匹の手に合うような小さいおにぎりを作ってあげると、嬉しそうにニコニコしていた。

4/27
チマがキュルーンと歌っているのをチキがルー?と探り探り真似している。
元が違う種類のポケモンの子なので鳴き方には個性があるようだけど、人間の言葉を覚えようとする時みたいに、
ポケモン間でも鳴き真似や歌真似をするようだ。
そういえばキバナさんもたまにドラゴンポケモンの鳴き声っぽいものを出す事がある。
前にそれを指摘すると「え、オレ様そんな事してるか?」と自覚が無い様子だったけど、
今思えばあれは無意識にやっているんだろう。
人間も元はポケモンだったなんて話があるけれど、それが本当なら僕達の先祖は......何て考える事もたまにある。

4/28
今日は天気が良かったので洗濯物を干した。
バルコニーに出て空を見上げると雲一つ無い晴天で風は穏やかだ。
窓際のソファーで遊んでいたチマが、ご機嫌な様子で空に向かってキュルーンと一鳴きすると、
空を飛んでいた鳥ポケモンが返事をして、遠くの山に飛んでいった。
チマとチキはその鳥ポケモンが見えなくなるまで手を振っていた。

4/29
朝起きると二匹が揃ってベッドの枕元の辺りを指差していた。
何かと思って見てみると枕から出てきた羽毛をツンツンしている。
チキが引っ張ってみるとそこそこ大きい羽が出てきて、二匹は大発見をしたといった様子で興奮していた。
チキがその羽でチマをくすぐるとチマがキャッキャと笑って喜んでいる。
羽は宝物にするらしく、二匹の遊び場に飾られた。

4/30
今日も二匹はお勉強中だけど、いつもよりずっと真剣な表情で取り組んでいる。
ピーナッツの殻をテーブルに並べて数字のお勉強をしているようだ。
「に」 「さ」と順に言いながら机に並べたピーナッツの殻の数を足して行く足し算のレッスンをしていたけど、
しばらくして見たら、ピーナッツの殻を縦に積んで遊んでいた。
積み木遊びみたいな感じで、これはこれで楽しいらしい。

5/1
朝起きた時窓に何か当たる音が聞こえた、砂嵐だ。
ワイルドエリアの砂漠地帯に近いナックルシティは風の強い日に砂が街中に飛んできて、窓に当たりパラパラと鳴る。
チマとチキが初めて聞く音に寝ぼけ眼で不思議そうにキョロキョロしている。
カーテンを開けて外の様子を見せてあげると納得したらしく二度寝しちゃった。
再度起きてからは窓の外の砂嵐をずっと眺めて、チマは飛んでいる砂を指差して「ぱら、ぱら」と言っていた。

5/2
ドラゴンタイプ用のポケモン用のおやつを見つけたので買ってきた。
二匹にあげると夢中でペロペロしている。
すっかりお気に入りになったようなので製品のCMを動画で見せてみると、
CMのダンスと歌を真似するようになって可愛い。
きゅー♪きゅーん♪と歌いながら踊るチマにつられてチキとキバナさんも踊っていた。

5/3
今日はちょっと暑い。
シートとバスタオルを敷いた上に置いたタライにぬるま湯を入れた簡易温水プールを用意すると、
チマとチキが水掛け合いっこをしたりボール遊びをして楽しんでいる。
ひとしきり遊んだ後、チマが満足気にちゅるりと鳴いてタライの脇に畳んで置いておいたバスタオルの上で
コロコロと左右に転がり、遊びながら体を拭いているのを見てチキも真似していた、かわいい。
その後おやつの時間に、差し入れで貰った水ようかんというお菓子を、竹筒の形の容器からにゅるっと出すところを
二匹に見せたら不思議そうにようかんが出た後の容器の中を覗いていて、
ペロペロ舐め出したので中身はこっちだよと差し出すと食べ始めたけど、食べてる間も容器に興味津々だった。

5/4
ぼくがお昼ご飯を作っている間に二匹が窓際で遊んでいた。
二匹は今お絵かきにハマっているらしく、画用紙にクレヨンで色んなものを描いている。
チマは水色のクレヨンが好きらしく、それでビー玉の絵を描いている。
一方、チキは青いクレヨンが好きで、青だけで沢山のものを表現していた。例えば花瓶とか空とか。
途中から二匹で一枚の絵を描き出したので何を描いていたのか聞いてみると、海と空らしい。
綺麗だねと褒めると、嬉しそうに笑っていた。

5/5
今日は朝早くから雨が降っていて、外で遊べないので家の中で遊んだりテレビを見たりして過ごした。
おやつのロールケーキに二匹は自分達用の小さなスプーンとナイフで果敢に挑んでいる。
手乗りサイズの小さな体に合うように特注でメーカーに作ってもらったカトラリーセット、
二匹にも安全に使えるように先が丸くされている。
精巧なミニチュアの食器を感心して見つめている間に、チキとチマの頬がクリームまみれになっていた。

5/6
今日は朝からお出かけの準備をしているので二匹もソワソワしている。
行き先は懸賞で偶々当たったホテルのスイートルームだ。
ぼくやキバナさんの家よりも豪華なベッドに二匹がはしゃいで跳ね回っている。
キングサイズのベッドが二つあるから、ひとつはチキとチマでふたりじめだなとキバナさんが楽しそうに言う。
人形サイズの小さな二匹には、大きなベッドは大海原のようだ。
シーツの波を潜るようにして二匹がベッドの上をキャッキャと笑いながら泳いでいる。
素泊まりコースの券なのは、一般の人の目に触れさせちゃいけないハーフポケモンの二匹を連れているぼく達には都合が良い。
スイートルームの絶景を眺めながらルームサービスの料理を並べて、のんびりと過ごした。
チマとチキは初めて見る高層からの夜景に目を輝かせていた。
夜になって、一緒にお風呂に入った後はふかふかなキングサイズベッドで二匹仲良く眠っていた。

5/7
今日はチマとチキの様子がおかしい。
いつもなら朝ごはんを食べる時ははしゃいでご機嫌に鳴きながら食べ始めるんだけど、今朝は大人しく食べている。
何かあったのかな、と思っているとキバナさんがこっそりある動画を見せてきた。
テーブルマナー動画だ。
「最近これの真似っこがブームらしいぜ」とキバナさんに言われ、ぼくが二匹の方を見ると
チマがおすまし顔で小さなハンカチでお口をふきふきしていた。
でもおやつに出したモンブランは豪快に食べていた。

5/8
「お前ら大きくなったなぁ」
キバナさんがチマとチキを抱っこしながらしみじみと言う。
確かに、この前まで掌に乗るくらいのサイズだったのに
今ではキバナさんの腕にすっぽり収まるほどの大きさになっている。
最近は言葉もだいふ覚えてきて、もう尻尾やツノがある事を除けば人間の子供と変わらないように見える。
これからどんな大人に育っていくのかな......という夢を見た。
「夢か......」
ベッドから身を起こしてぼくが呟くと、居間に水を飲みに行っていたらしいチマが籠ベッドに戻って来たところらしく「きゅー?」と鳴いた。
なんでもないよと指先で小さな頭をそっと撫でると、チマはまた眠り始めた。
チマが寝たのを確認してから、ぼくももう一度布団に入って目を閉じた。
なお、キバナさんとチキはぐうぐう爆睡していた。

5/9
今日は久しぶりにワイルドエリアにキャンプをしに来た。
人目につかないようにならチキとチマも遊ばせられるので、しばらくは自然を堪能した。
二匹はテントが楽しいみたいで、中に入ると興味深そうに見回したり、あちこち探検したりして楽しそうだった。
夜はカレーを作って食べた。
チマとチキはアウトドアで作るカレーに大興奮で、
一口食べる度にすごい!おいしい!!と言わんばかりに体をぴょこぴょこ動かして喜んでいた。
その後二人と二匹で星を眺めて、テントでお泊まりして次の日のお昼頃に帰宅した。
また行こうね。

5/10
今日は朝からキバナさんと二人でナックルシティにあるブティックへ買い物に行った。
たまにはと、二人で互いの新しい服を選び合うのを楽しみ、お次はチキとチマの新しい服を買いにドール専門店へ行く。
すっかりお馴染みになったこのお店、実はここの店の人たちにだけは研究所の許可付きでチキとチマのことが知られている。
ちなみに、ここは二匹が着せ替え人形として遊ばれる場所でもあり、
同時にお客さんがいない時間は二匹がのびのびできる場所でもある。
今は夏用の涼しそうな服を着せられている二匹だけど、店員さんの趣味なのか、
どれも男の子向けの海兵さん風セーラー服だ。
ヨットのボタンや星の刺繍など可愛らしさを詰め込んだようなデザインで、とても似合っている。
店主さんは意気揚々とチキやチマをモデル立ちさせて、写真を撮影しまくっていた。
チキとチマは最初は戸惑っていたけど、すぐに慣れてポーズを取ったり表情を変えたりしていた。
試着した服を全部購入したら、先程のセーラー服にピッタリな帽子をおまけで貰ってしまった。
帰宅後早速被せてあげると、二匹とも嬉しそうに笑っていた。

5/11
チマとチキがテレビを見ている。
特に、バトルの中継が好きらしく、画面に向かって真剣な眼差しを向けている。
二匹が見ているのはドラゴンタイプ同士の熱い戦いだ。
大きな翼で空を舞いながら激しい技の応酬を繰り広げる、その迫力に二匹は目を輝かせながら見入っていた。
そして、どちらかが倒れた時は必ずと言っていい程二匹揃って大泣きするのだ。
二匹がバトルに関わる日が来るかは分からないけど……野生のポケモンと、バトルが人生と言っても良いぼく達と、
ふたつの遺伝子を持ったハーフポケモンの二匹だからこその熱い感情なんだろうと思う。
そんな二匹の姿に、ぼくは密かに胸が熱くなるのを感じていた。

そんな感じで相変わらず日々を過ごしています。
今日はキバナさんの案内で二匹を連れてナックル城の関係者だけが入れる中庭に入れてもらいピクニックをしている。
チマとチキはそこに住み着いているポケモン達と仲良くなって一緒に遊んでいた。

また近いうちにお話ししましょう、ではまた。